【ビワの品種一覧】苗木を入手可能なものから詳しく解説!

ビワの品種

枇杷(ビワ)の木
枇杷(ビワ)の木(筆者栽培)
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ビワ(漢字:枇杷 英語:louquat 学名:Eriobotrya Lindl.)は中国から伝わったオレンジ色の実がなる果樹です。中国の中南部原産で明治時代には日本に伝わっていました。ビワの木は冬も温暖な気候を好みます。旧正月頃に開花がはじまるため凍害を受けると収穫量が減ってしまいます。昭和時代には茂木、田中という二大品種がありましたが平成時代では長崎や大房などを経て、令和時代では大房に加えて新品種の栽培も試みられています。ここでは枇杷の品種に関する知識を深めるため歴史などにも言及していきたいと思います。

熟期は早生(5月下旬)、中生(6月上旬)、晩生(6月下旬)としています。

栽培可能な地域は暖地と中間地(温暖地)です。-3度を下回らない暖地では南部亜熱帯系の品種が適しています。中間地(最低気温-5度)では北部亜熱帯系の品種が適していますが-2度を下回ると果実や花が凍害を受ける可能性があります。

年間平均気温12度からでも栽培可能ですが、経済栽培では年間平均気温15度から17度の地域が適しています。

受粉樹を要する品種があります。

ビワの可食部の栄養素はビタミンAが豊富でビタミンB6、ビタミンB9、ビタミンC、マグネシウム、カリウム、マンガンを含みます。葉や種子には毒が含まれており食べられませんのでご注意ください。ビタミンAの摂りすぎにもご注意ください。

目次

栽培方法に関しては拙著「ビワの木の育て方」をご参照ください。

中国の品種

中国には300種類以上の品種があります。枇杷の起源については北亜熱帯と南亜熱帯の二つのグループがあります。南亜熱帯のグループは耐暑性があり枝の先端が太くなっています。木の形は開いており果実は大きく風味は少し軽いです。果実は越冬の際に凍害を受けやすくなります。北亜熱帯のグループは温帯の南縁および北亜熱帯に自生する品種が含まれます。このグループは耐寒性と耐乾性があります。葉も果実も小さく強い風味があります。北亜熱帯の品種を温暖な地域に植えるとしばしば木の勢いが激しくなります。

南亜熱帯の代表的な品種に大五星、福建の早钟6号(早鐘6号)、长红3号(長紅3号)などがあります。北亜熱帯の代表的な品種に浙江の大紅袍、洛陽青、江蘇省蘇州原産の白玉白沙と照种白沙、安徽の光荣(光栄)などがあります。

果肉の色は赤沙(赤肉)と白沙(白肉)に分類されます。赤沙は栽培容易で果肉は粗い傾向があります。白沙は抵抗力がわずかに劣り、皮は薄く果肉は密で、味は甘く品質が良く生食に適しています。白沙の収量は赤沙に劣り、高温や干ばつ、雨に弱く裂果するため高い栽培技術を要します。白沙の品種は栽培地において1果30g、糖度14~18度あるといわれます。白沙の品種は白玉と照种のほか、青种、美玉、丰玉、宁海白などがあります。

大五星

1978年に四川省成都龍泉区で開発された中国の枇杷。へその形が星の形をしていることから名づけられた。1999年の昆明世界園芸博覧会で銀賞を獲得した。日本への輸入の経緯は不明。誰が、いつ合法的に(?)持ち帰ったのか!?平均果実重は60g、大きいもので70g程度。四川省にて9月から11月にかけて開花し5月か6月に成熟する。不適切な管理で冬に落葉しやすい。年間平均気温が15度以上で最低気温-3度を下回らないPH6~8の土壌に適する。日本の園芸店でも入手可能。

江戸時代の品種

枇杷は江戸時代後期に中国南部から日本に伝わりました。

明治時代の品種

明治時代に品種改良された枇杷の品種です。

茂木(もぎ)

唐枇杷の実生。寒さに弱い。

楠(くすのき)

唐枇杷の実生。

田中(たなか)

唐枇杷の実生。いまだに知名度が高く家庭菜園で人気の品種。筆者も栽培していたが完熟すると十分甘く、かなり高糖度になった。

昭和時代の品種

昭和時代に品種改良した枇杷の品種です。

瑞穂(みずほ)

唐枇杷の実生。1936(昭和11年)発表。

大房(おおふさ)

大玉栽培用の品種で千葉県が産地。1967年(昭和42年)に発表。品種登録はされていなかった。平成末期でも日本の主力品種で生産量の7割を占めた。

里見(さとみ)

早生。中玉。楠の自然交雑実生。果実は60g~70gで田中よりやや小さい。幼木時は直立性で成木ではやや開張性。樹勢中。果皮の紫斑中、緑斑無、そばかす軽微。果肉厚さ中。果肉の粗密は中。田中より甘く楠と同程度。酸味は田中および楠より多い。香気無。育成地にて5月下旬に熟す。開花期は11月上旬から12月上旬。成熟期は5月下旬。1982年(昭和57年)千葉県が品種登録。

房光(ふさひかり)

瑞穂と田中の交配種。樹勢中間で開張性。1果平均65g~70gで田中よりやや小さい。開花時期は11月中旬~1月中旬、成熟期は6月上旬。果皮紫斑。緑斑軽い。そばかす無。甘味酸味は田中より多い。1982年(昭和57年)千葉県が品種登録。

長崎早生(ながさきわせ)

極早生。小玉(現代の価値観では小玉だが、登録時には大とある)。樹勢強く樹姿中間。開花期やや早。成熟期は極早生。紫斑軽。果粉多。 果皮色黄橙。甘み多(現代の価値観では中と思われる)、香気少。種子数多。果肉の粗密は中。果肉厚い。 室戸早生と田中の交配種。1果房に3~4果で果実40g~50g。 耐寒性茂木より強。 1979年(昭和54年)に長崎県が品種登録。

白茂木(しろもぎ)

晩生。小玉。茂木の自然交雑実生。果皮と果肉が黄白色。樹勢強く直立性。小花梗の向きは中。花数多い。 紫斑・緑斑は無。そばかすほとんど無。開花時期やや晩。開花盛期12月下旬~1月上旬。成熟期は晩で6月中下旬。茂木より熟期14日遅い。 1果房3果の着生にて果実45g。甘み多く糖度平均13.4度で酸味少ない。果肉厚さ中。果汁多く軟らかい。 種子数は中。 1982(昭和57年)に長崎県が品種登録。

源蔵(げんぞう)

やや晩生。大玉。交配親不明の交雑実生。東京都にて6月中旬に熟す(※当時)。小花梗の方向は下向き。甘み少。果汁多い。1986年(昭和61年)倉方英蔵氏と倉方正四郎氏が品種登録。もう原木は無いかもしれない。このお方はよっぽど物好きなんだなと思います(筆者談)。

倉方ビワ(くらかたびわ)

晩生。交配親不明の交雑実生。果実70g~80g。育成地の東京都世田谷区にて6月下旬に熟す(※当時の話)。果皮の色は黄。紫斑軽く、緑斑は無い。そばかすやや軽。果粉は中。果肉厚さ中で色は黄。粗密は中。堅さ中。甘みは中(12~13度)。酸味は中、果汁多く、香気は少。種子数および種子大きさ中。開花期は晩。成熟期も晩。田中や戸越、大房と比べて果皮および果肉の色が黄。瑞穂と比べて緑斑無く甘味多い。倉方英蔵氏(倉片柿の人)により1988年(昭和63年)品種登録。

富房(とみふさ)

中生。大玉(70g)。津雲と瑞穂の交雑実生。直立性で樹姿および樹勢は中。小花梗の方向はやや下。花数多。開花期中、開花期間長、成熟時期は中。果皮の紫斑軽、緑斑無、そばかす軽。果肉の甘み中、酸味少、堅さ中。果汁多、香気少。種子多い。1989年(昭和64年)に千葉県が品種登録。 瑞穂より果実小さい。田中より成熟期早い。

平成時代の品種

平成時代に品種改良された枇杷の品種です。

福原早生(クイーン長崎=甘香)

大玉栽培用の品種で1990年(平成2年)に選抜された。趣味栽培でも人気の品種。
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田茂(たも)

晩生。茂木の自然交雑実生。熟期は田中と同じ。茂木と田中の混植園にて発見された。育成地にて6月20日に熟す。直立性で樹姿大きく樹勢強い。開花時期は中、開花期間は長、成熟期は晩。果実の大きさは40g~50g。紫斑軽・緑斑無、そばかす軽。果皮色橙黄。果実の粗密はやや密。甘み中、酸味少、香気少。堅さ中、果汁多。種子数中、種子大きさ小。1994年(平成6年)に香川県が品種登録。香川県内にて広く栽培される。

房姫(ふさひめ)

中生の大玉(80g)。楠と津雲の交配種。直立性で樹勢強い。果皮色橙黄~橙。紫斑は軽だが緑斑はやや甚大。そばかすは中、果粉やや多。果肉厚さ中。甘み中、酸味少、果汁多、香気少。種子多く小さい。開花期やや早、開花期間中、熟期中。育成期にて熟期6月上旬。 1999年(平成11年)に千葉県が品種登録。

涼風(すずかぜ)

中生。大玉。楠と茂木の交配種。育成地にて6月上旬に成熟する。樹姿やや開張性で樹勢中。小花梗の方向はやや下。紫斑軽、緑斑無、そばかす軽微。果肉厚さ中、甘味中、酸味少、果汁多、香気少。種子数多い。茂木より果粉少ない。開花期は中、期間は中、成熟期も中。房姫より花数多い。着色揃いは良い。1999年(平成11年)に長崎県が品種登録。

陽玉(ようぎょく)

中生。直立性で樹姿やや大きく、樹勢はやや強い。小花梗の向きはやや下。花の大きさは大、花の数は中。紫斑やや甚大、緑斑は無。そばかすやや軽。果粉は中。果皮・果肉の厚さ中。色は橙黄。粗密は中。硬さは軟らかい。甘みと酸味は少。果汁多く香気少ない。種子数は中。開花期・成熟期は中。着色揃いやや良。野島早生より花が大きい。茂木より枝梢細い。房姫より花穂の形が中、緑斑が無。茂木と森本の交配種。育成地において熟期は6月上旬。1999年(平成11年)に長崎県が品種登録。

麗月(れいげつ)

早生。森尾早生と広東の交配種。直立性で樹は大きく、樹勢強い。花大きく花数は中。果皮の色は黄白。紫斑・緑斑は無。そばかす軽。果粉多い。果皮厚くはく皮は容易。果肉厚さ中、色は黄白。果肉緻密で軟らかい。甘み多く酸味多い。果汁は中、香気は少。種子多い。開花やや早。熟期早。着色揃い良。長崎早生より果皮、果肉が黄白。ハウスにて熟期は4月中旬。2005年(平成17年)に長崎県が品種登録。

涼峰(りょうほう)

早生。楠と茂木の交配種。やや開張性で樹勢やや強。花梗の着生方向はやや下。果実の大きさはやや大である。果肉は厚い。そばかすやや多。緑斑は無し。紫斑は中。果粉多い。甘み中、酸味少。果汁やや多く香気は少ない。種子多い。開花期やや早、成熟期は早く育成地にて5月中旬で着色揃いは良い。長崎早生と比べて果実大きい。2005年(平成17年)に長崎県が品種登録。

希房(きぼう)

田中の実生4倍体に長崎早生を交配した3倍体の品種。樹姿中間、樹勢強い。小花梗の向きはやや下。花穂の数多く、花が大きい。紫斑・緑斑・そばかす軽い。果粉多い。果皮かなり厚い。果肉かなり厚い。果肉の緻密さは中、軟らかさ中、香気少ない。甘み中、酸味少、果汁多い。種子数極小。開花期は晩。成熟期はやや晩。熟期はハウスにて5月中旬。着色揃いやや不良。千葉県により2006年(平成18年)品種登録(有効期限は2036年)。ハウス栽培向け。

なつたより

長崎早生と福原早生の交配種。直立性で樹勢やや強い。若木の結実性良い。果実サイズ65g~75g。糖度高く酸味少なく食味良い。田中より15日、大房より5日早く収穫できる。房総半島にて収穫時期は6月3日頃。小花梗の着生方向は上方向であるため凍害に弱い。種子数3~5個開花期10月下旬~1月下旬。2009年(平成21年)に長崎県が品種登録。大房の欠点をなくす目的で作られた。


はるたより

樹勢はやや開張性。果肉やや厚い。果肉の堅さ中、果汁中、甘さ中くらい。酸味少ない。種子の数は3~5個。開花時期は中、成熟期はやや早い。長崎早生より果実が大きい。なつたよりと比べて開花時期は短い。2014年(平成26年)に長崎県が登録。がんしゅ病抵抗性強。筆者も2020年3月に苗木を3628円で購入した。

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参考文献

更新履歴
  • 2020年2月23日: ページを作りました。
著者からのコメント

なるべく正確に記すように努めておりますが、特性の誤表記などがあるかもしれませんので詳しくは参考文献をご覧ください。

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